住まいを考える|29|六角形の家は、なぜ六角形になったのか
六角形をつくりたかったわけではありません
「六角形の家」という名前を聞くと、最初から特徴的な六角形の建物を目指して設計したように思われるかもしれません。
しかし、この住まいはそうではありません。
もともとは鉄骨造の歯科医院だった建物を住宅へリノベーションしたプロジェクトです。
店舗だったため、大きな一つの無柱の空間が広がっていました。
そのまま四角いLDKとして計画すると、ただ広いだけで居場所の少ない空間になってしまいます。
そこで私たちは、空間の中に「居場所」をつくることから設計を始めました。
居場所を考えた結果、六角形になりました
玄関には少し囲まれた安心感を。
リビングには腰掛けたりくつろげる小上がりを。
大きな四角い空間の中へ、それぞれの場所を丁寧に組み込んでいくと、自然と平面に角が生まれていきました。
その結果、生まれたのが六角形を思わせる空間です。
正六角形ではありません。
しかし、その形を住まい全体のモチーフとして天井デザインなどにも展開し、「六角形の家」と名付けました。
つまり、この住まいは六角形を目指したのではなく、
暮らしやすさを考えた結果として、六角形が生まれた住まいなのです。

四角だけが建築ではありません
建築では、90度で構成された四角い空間には多くの合理性があります。
施工しやすく、家具も納まりやすく、構造的にも効率的です。
私たちも基本となるラインは90度を大切にしています。
一方で、自然は必ずしも90度ではありません。
太陽の光。
眺めたい風景。
空へ抜ける視線。
風が通る方向。
それらは敷地ごとに異なります。
だから私たちは、必要な場所だけ少し建築を振ることがあります。
一面だけ壁を斜めにしたり、窓の向きを少し変えたり。
そうすることで、光や景色をより自然に暮らしへ取り込むことができます。
外壁に斜めのラインが現れることがあるのは、デザインのためではなく、その場所に最もふさわしい方向へ建築を向けた結果なのです。


敷地が形を決めることもあります
この考え方は、「宮の沢の家」でも取り入れています。
この住まいは三方道路に囲まれ、道路同士が少し角度を持って交わる特徴的な敷地でした。
さらに、希望する床面積を確保するため、建ぺい率いっぱいまで建物を計画する必要がありました。
その結果、建物の輪郭も自然と多面体の形になっています。
さらに、一つの壁面は約45度振ることで、道路の先に広がる森を正面に望める窓を計画しました。
その方向は、南からの光も取り込みやすい角度でもあります。
敷地の形。
景色。
光。
それぞれを丁寧に読み解いた結果として、多面体という形が生まれました。

形には、一つひとつ理由があります
建物の形を見て、
「ユニークなデザインですね。」
と言われることがあります。
もちろん、その見え方も間違いではありません。
しかし私たちは、形を先に考えることはほとんどありません。
その土地を読む。
光を読む。
風景を読む。
暮らしを考える。
居場所を考える。
その積み重ねの先に、建物の形があります。
だから、三角形の建物もあれば、四角い建物もあれば、多面体や円形になる建物もあります。
ユニークな形をデザインすることが目的ではありません。
その場所と、そのご家族にとって最も心地よい暮らしを考えた結果として、ご家族にとり最高の価値を実現する建築の形が生まれる。
それが、私たちの考える設計です。
この考え方を取り入れた住まい
〔六角形の家〕
鉄骨造の歯科医院を住宅へリノベーションした住まいです。広い一つの空間を、玄関や小上がりなどの居場所によって心地よいゾーンへ整理した結果、六角形を思わせる平面が生まれました。形を先に決めたのではなく、暮らしやすさを考えた結果として生まれた建築です。
〔宮の沢の家〕
三方道路に囲まれた特徴的な敷地形状を素直に受け止め、建ぺい率いっぱいまで建物を計画したことで、多面体の平面となりました。さらに、道路の先に広がる森へ正対するよう約45度に窓を振り、景色と光を取り込んでいます。敷地を読み解いたことから生まれた住まいです。
〔PARALLEL〕
基本となる建物のラインは90度を大切にしながら、一面だけ外壁を斜めに振ることで、窓を光や空へ向け、内部空間にも広がりを生み出しています。大きく形を変えるのではなく、本当に大切な方向だけを丁寧に調整することで、その場所ならではの心地よさを実現した住まいです。
English
A home’s shape should never come first.
Whether rectangular or polygonal, the form of a house should emerge naturally from its site, light, views, and the way people live. Good architecture is not about creating unusual shapes—it is about finding the most appropriate answer for each place.
Last Updated:2026.07.14