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2026.7.16 医療施設を考えるブログ

医療施設を考える|01|医療施設とは、誰のための建築か


医療施設を設計するとき、私はいつも一つの問いに立ち返ります。
「この建物は、誰のための建築なのだろう。」
医療施設には、診療科ごとの機能、医療機器の配置、効率的な動線、法令への対応、そして経営や運営の合理性など、多くの条件が求められます。
それらは医療施設を計画するうえで欠かすことのできない、大切な要素です。
しかし、それだけで、人が過ごす建築として十分だとは私は考えていません。
人は人生の中で、誰もが必ず医療と向き合う時間があります。
その場所を訪れるとき、多くの人は不安や痛み、緊張を抱えています。
その時間が、少しでも安心できるものであってほしい。
私は、医療施設には診療という機能だけではなく、人の心に安心を届ける役割があると考えています。





建築は、人の心に安心を届けられる。





木のぬくもり。
やわらかな自然光。
落ち着いた色彩。
素材の質感。
建築には、人の気持ちを静かに支え、不安を和らげる力があります。
私は、その力を信じています。
医療施設は、医療機器や設備だけで成り立つものではありません。
そこを訪れた人が、「少し気持ちが落ち着いた」「ここなら安心して診てもらえそうだ」と感じられることも、建築が果たす大切な役割だと考えています。









医療施設も、住まいも、本質は変わらない。





この考え方は、医療施設だけに当てはまるものではありません。
住宅を設計するときも、私は同じことを考えています。
リビングでくつろぐ椅子の高さは心地よいだろうか。
天井の高さは落ち着けるだろうか。
家族との距離感は自然だろうか。
人がその場所でどう感じ、どう過ごすのか。
その積み重ねが、建築の居心地をつくります。
医療施設でも本質は同じです。
受付との距離は安心できるだろうか。
待合室で周囲の視線を気にせず過ごせるだろうか。
待ち時間を少しでも穏やかな時間に変えられるだろうか。
医療施設だから特別な建築を考えるのではありません。
人がそこにいて快適か。
私は、そのシンプルな問いを設計の中心に置いています。





患者さんも、働く人も、この建築の主人公。





その「人」とは、患者さんだけではありません。
医師、看護師、受付スタッフ、薬剤師など、その場所で毎日働く人たちもまた、この建築の主人公です。
働く人が気持ちよく働ける環境は、診療の質を高め、患者さんへの接し方にも自然と表れていきます。
患者さんにとって心地よい場所は、働く人にとっても心地よい場所である。
私は、その両方を同時に考えることが、良い医療施設につながると考えています。
その考え方を、建築という形にする。
設計をするとき、私はいつも自分自身に三つの問いを投げかけます。
自分が、この場所にいたいと思えるか。
大切な家族に、この場所で診療を受けてほしいと思えるか。
そして、自分が、この場所で働きたいと思えるか。
患者として。
家族として。
働く人として。
その三つの立場を行き来しながら建築を見ることで、本当に必要なものが少しずつ見えてきます。
この考え方は、実際の設計にも反映しています。
私たちが設計した「おおにし内科・リウマチ科クリニック」では、患者さんが少しでも穏やかな気持ちで過ごせる待合空間を目指しました。
天井を高く取り、間接照明によるやわらかな光で空間全体を包み込み、大きな窓からは空や街並みを眺められるようにしています。
視線が遠くへ抜けることで圧迫感は和らぎ、待ち時間の緊張も少しだけ軽くなります。
一方、診察室には自然光を取り入れていません。
均一で安定した人工照明のもとで、医師が診療に集中し、正確な判断ができる環境を優先したからです。
安心感を支える空間と、診療の精度を支える空間。
その両方を丁寧に設計することが、私たちの考える医療施設設計です。









建築の価値は、使う人が決める。





もちろん、設計者として、自分自身も納得できる建築をつくりたいと思っています。
しかし、それだけでは十分ではありません。
建築主が笑顔になること。
医院が地域に根付き、長く愛されること。
働く人が誇りを持って仕事ができること。
患者さんが安心して通い続けられること。
そのすべてが重なって、初めて「良い建築ができた」と胸を張って言えるのだと思います。
建築が評価されることや、作品として認められることは、とてもありがたいことです。
けれど、それは目的ではありません。
私が本当に目指したいのは、その建築を使う人が、「ここで良かった」と感じてくれることです。
私は、「どんな建物をつくるか」ではなく、「その建物が、その人にとってどれだけ価値のある場所になるか」を大切にしながら設計をしています。
建築の価値は、設計者が決めるものではありません。
その建築を使う人が決めるものです。
私はこれからも、建物をデザインするのではなく、その場所で過ごす人にとっての価値を設計するという思いを大切に、一つひとつの医療施設と向き合っていきます。
医療施設とは、医療を行うための建築である前に、人の人生に寄り添う建築である。
その原点を忘れず、これからも設計を続けていきたいと思います。










English Summary





Who is a healthcare facility really designed for?
Healthcare architecture is about far more than function and efficiency. It is about creating places where patients feel reassured, healthcare professionals can work comfortably, and every person who uses the building experiences lasting value.
Our design philosophy is guided by three simple questions:
・Would I want to be here?
・Would I want someone I love to receive care here?
・Would I want to work here every day?
By designing from these perspectives, we aim to create healthcare environments that support both people and medical care with comfort, dignity, and lasting value.
Last Updated:2026.07.10










この考え方から生まれた医療施設





おおにし内科・リウマチ科クリニック
患者さんが安心して過ごせる待合空間と、医師が診療に集中できる診察環境。その両立を目指し、「安心感」と「診療の精度」を建築で支えることをテーマに設計したクリニックです。
▶︎ Works|おおにし内科・リウマチ科クリニック


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