空際の家

敷地は南幌町の農地風景の中、文字通り地平線の中にあります。

クライアントに初めて敷地をご案内いただいた時は夕刻、地面と空しかない土地で半球が茜色に染まった圧倒的なその光景から、この圧倒的な農地風景を素直に望み暮らせる住まいを設計しようと考えました。

プランニングにおいてはまずメイン空間の窓から、大らかに地平線、そしてご自身の農園を望む事を軸としました。

広々としたLDKでご家族が共に時間を過ごすことをご希望されたことから、1Fは大きなワンルーム空間とし、風景へと向き合うプランとしました。

災害時の浸水が想定されるエリアであることから、1F床レベルを高めに設定しながらも大地から緩やかに内部空間へと繋げたかった事から、ポーチから屋内へといくつかのスキップで螺旋状に空間を上がるようにレベルを上がることで滑らかにスキップフロアにて階層をつなぎ、また、開放的な空間の中でも床段差、天井高さの差を付けることによる空間の切り替わりを考えました。

リビングでプロジェクターを楽しむ際にはリビングの2段の段差は、ホームシアターの座席にもなります。

お子さんとともに生活を楽しむことを重視されたことから、階段に沿って作られた滑り台や、各所から目が届きつつ秘密基地のような中二階の子供スペース、階段下を利用した小さなヌックなど、各所に家族が楽しめる仕掛けをちりばめました。

広くとった土間の内壁は、リビングのアクセントウォールとして、ご家族お気に入りのアートを飾ることのできるギャラリーとして設えています。

水平に広がる地平線とそこに垂直に立つ農作物のイメージから、外壁は水平ラインと垂直ラインを意識したテクスチャーの選定、また農地風景の中に調和しつつ、自然に対峙する強さを持つ事を意識しました。

温熱環境としては、高断熱設計と省エネルギー設備によりZEH Orientedの認定を取得しています。

ご家族が農と共に生きる拠点として、心豊かに気持ちよく過ごせる場所を設計しました。