Photolog 005 T字路の家 階段見上げ
【Photolog 005 T字路の家 階段見上げ】
これはT字路の家、エントランスのホールから2階世帯へ上がる階段を見上げたところです。
「階段板」はナラ修正材、階段の奥の板「蹴込」には床で使用しているナラの無垢フローリングを張り、段の高さの中央で目地としています。
段板はオイル系のオスモフロアクリアーで塗装しており、木の質感が足触り良く伝わります。
上る方向に目線を向けると、斜めに上がった目線は2階の天井、現しの梁・構造用を兼ねた針葉樹合板の木の質感を捉えます。白い壁は曲面し、光を拡散するとともに階段を上る人の目線を自然に借景へと導く仕掛けともなっています。
階段がつながる2階の南東面に当たるLDKは日中大きく光を採り入れる空間であることから、壁面を反射して階段を介しエントランスに光を落とします。
手すりも段板と同じくナラ材で造作し、肌に直接触れる部分には木の質感、心地よい質感を重ねています。
現代、多くの本物と見まがう塩ビプリントの「〇〇のようにみえる」建材が氾濫していますが、生物である人が生きる空間において、やはり自然素材に勝る心地よい質感は無く、人が触れ感じる場所には無垢材や突板など本物の素材を使われることをお勧めしています。
階段の直上にはナラ材のルーバーを配置しています。
これは階の違いは二世帯の空間の区切りでもあることから、オープンにすると空気感がダイレクトに伝わりすぎてしまう、塞ぐと光や解放感が無くなってしまうという事から、目線は遮りながら空気や光は繋げるということ、またトンネル状の屋根下を潜るという行為が、階をまたぐという行為と合わせて、エリアを違えたという印象を無意識に感じさせてくれる事を狙っています。
「階を変える」「室(用途)をまたぐ」際には、段板・蹴込板・天井現し梁・ルーバー、木の目地・ピッチがリズミカルに目に表れます。
生活、人生の中で決して少なくない行為である「移動」を、豊かで快適な時間の一つと感じられることをいつも設計の中で考えています。
写真 酒井 広司(グレイトーンフォトグラフス)