住まいを考える|08|子どもが育つ住まいを考える
子どもの頃の家は、一生の記憶になります
子どもの頃に暮らした家を思い出してみると、不思議と細かなことまで覚えているものです。
勉強をしていた場所。
押し入れを秘密基地にして遊んだこと。
階段を何度も駆け上がったこと。
おばあちゃんの家で感じた木の匂い。
夏になると窓から吹き抜ける風。
冬、家族が集まる暖かなリビング。
大人になると、毎日の景色は少しずつ当たり前になり、新しい出来事にも慣れていきます。
しかし、子どもの頃は違います。
光、風、匂い、手触り、足裏に伝わる床の感触。
日々触れるすべてを、驚くほど豊かな感性で受け止めています。
子どもの頃にしか育まれない感覚があります。
だから私たちは、その時間を過ごす住まいをとても大切に考えています。
子どもにとって、住まいは世界を知る場所です
住まいは、雨風をしのぐための箱ではありません。
子どもにとっては、世界を知る最初の場所でもあります。
木の手触り。
裸足で歩く床の感触。
窓から差し込む光。
季節とともに変わる景色。
風の流れ。
登る、くぐる、隠れる、走る。
そんな身体を使った体験も、住まいの中で自然に育まれていきます。
私たちは、子どものためだけの特別な家をつくろうとは考えていません。
家族みんなが心地よく暮らせる住まいの中に、子どもが夢中になれる場所や、自分だけのお気に入りの居場所を、そっと散りばめたいと考えています。
遊具ではなく、体験を設計する
滑り台。
ボルダリングウォール。
ロフト。
秘密基地。
こうした仕掛けだけを見ると、少し特別な家に見えるかもしれません。
しかし私たちが設計したいのは、遊具ではありません。
毎日の暮らしの中で自然と生まれる体験です。
階段を上ることが冒険になる。
窓辺が読書の特等席になる。
兄弟で家中を走り回る。
家族で映画を楽しむ。
そうした何気ない日常が、子どもたちにとって忘れられない思い出になっていきます。
子どもは成長し、住まいも成長します
子どもは驚くほど早く成長します。
滑り台で遊ぶ時間は、ほんの数年かもしれません。
秘密基地も、いつか勉強する場所へ変わります。
遊び場だった空間が、読書を楽しむ場所になり、友人と語り合う場所になり、やがて家族の思い出が詰まった場所になっていく。
だから私たちは、「今」だけではなく、その先の暮らしまで見据えて住まいを考えます。
暮らし方とともに役割を変えながら、長く愛される住まいであってほしいと願っています。
建築家になった原点
子どもは、本当に何でも遊びに変えてしまいます。
段差は舞台になり、階段は冒険になり、押し入れは秘密基地になります。
だからこそ、住まいの中にほんの少しの工夫があるだけで、子どもたちの想像力や創造性は大きく広がっていくのだと思います。
そして、それは子どもだけのものではありません。
子どもたちが夢中になれる空間は、大人にとっても思わず笑顔になる場所です。
実は私自身、子どもの頃から忍者屋敷のような仕掛けが大好きでした。
隠し扉や秘密の通路、どんでん返しのある建物が登場する漫画やイラストを何度も眺めては、「こんな家があったら面白いな」と想像を膨らませていたことを今でも覚えています。
振り返ってみると、その頃に感じたワクワクする気持ちが、建築に興味を持つ原点だったのかもしれません。
今でも設計をしていると、「この場所をくぐれたら楽しそうだな」「ここに小さな居場所があったら子どもは喜ぶだろうな」と、子どもの頃の自分が少し顔を出します。
もちろん、住まいは遊びだけのためにつくるものではありません。
安全性や暮らしやすさ、将来の使いやすさを大切にしたうえで、その住まいならではの小さな発見やワクワクする体験を散りばめる。
そんな設計ができたら、家族の暮らしはもっと豊かになると考えています。
家族の記憶を育てる場所
子どもは、いつか大人になります。
でも、その家で過ごした記憶は、一生残ります。
「あの家、楽しかったね。」
「あの窓辺で本を読んだよね。」
「あの階段を何度も走り回ったね。」
そんな何気ない記憶は、家族にとってかけがえのない財産になります。
住まいは、完成した瞬間が一番価値を持つものではありません。
そこで暮らす日々の中で、少しずつ思い出が積み重なり、その家だけの物語が育っていきます。
私たちは、家を設計しているのではありません。
家族の記憶を育てる場所を設計している。
子どもたちが何十年後に振り返ったとき、「あの家で育ってよかった」と思える住まいをつくりたい。
それも、私たちが大切にしている設計の一つです。
私自身も二人の子どもの父親ですが、子どもたちが夢中になって遊ぶ姿を見られる時間は、思っているよりずっと短いのかもしれません。
だからこそ、その時間を家族みんなで楽しめる住まいを、一つでも多くつくっていきたいと思っています。
English
A home shapes childhood memories that last a lifetime.
A home is more than a place to live. It is where children discover the world through light, materials, movement, and everyday experiences. We believe these moments become lifelong memories and enrich family life for years to come.
Last Updated:2026.07.10
お子様がいるご家族の場合、家は主に大人が考え計画しますが、住む際には子供も立派な主役の一人、いや、むしろ家をフル活用して遊んでくれる実質上の主役といても過言ではありません。
子供が元気に楽しく過ごせる空間は家族を元気にすると言えると思います。
子供はじっとしている事は難しい、まさに「エネルギーの塊」。住まいの中と外、その周りで子供が建物を活かして楽しく過ごせる空間作りという観点で設計実例をピックアップしてみました。(20230817内容更新)
この考え方を取り入れた住まい
●滑り台と映画館のある「空際の家」



●梯子・ボルダリングウォール・雲梯で階をまたいで楽しむ「北窓の家」



●中二階のスタディスペースからの子供部屋への抜け穴「中二階が繋ぐ家」





●芝生のようなくつろぎのベンチエリアのある「T字路の家」


●階段上の空きスペースを「く」の字の寝椅子&ロフトに「Slash」

●子供の身長に合わせたフリースペース「宮の沢の家」
