住まいを考える|13|キッチンは「選ぶ」より「暮らしから考える」
キッチンは、住まいの中心になる場所
住まいを考えるうえで、キッチンはとても重要な場所です。
料理をするだけではなく、家族と会話をしたり、子どもが宿題をしたり、友人と食事を楽しんだり。
毎日の暮らしの中で、多くの時間を過ごす場所だからこそ、「どのようなキッチンにするか」は住まい全体の心地よさを大きく左右します。
機能性、メンテナンス性、デザイン性、素材感、コスト、使い勝手。
何を大切にするかは、ご家族によって異なります。
だから私たちは、キッチンを設備として選ぶのではなく、そのご家族の暮らし方から考えることを大切にしています。
キッチンは設備機器ではなく、家族の暮らし方を映し出す場所だと私たちは考えています。
キッチンのつくり方は、大きく3つあります
キッチンのつくり方は、大きく分けると次の3つです。
・システムキッチン(メーカーキッチン)
・造作キッチン(造作家具業者制作によるオーダーキッチン)
・大工工事によるオリジナルキッチン
それぞれに特徴があり、どれが優れているというものではありません。
建築家の役割は、それぞれの長所と短所を理解し、ご家族に最も合った方法をご提案することだと考えています。
メーカーキッチンという選択
一般的に最も多く採用されているのが、メーカーのシステムキッチンです。
長年改良を重ねた高い完成度と、優れたメンテナンス性、豊富なオプションなど、多くの魅力があります。
一方で、サイズや素材、デザインには一定の制約があります。
そのため私たちは、キッチン単体で考えるのではなく、周囲の家具や壁、天井、床との関係まで含めてデザインし、住まい全体に自然になじむよう設計しています。
造作キッチンという選択
造作キッチンは、一からオーダーメイドでつくるキッチンです。
素材や寸法、収納、デザインまで自由に計画できるため、その住まいだけの一台をつくることができます。
例えば、体格に合わせて高さを調整したり、お気に入りの木材や石材を採用したり、海外製のビルトイン機器を組み込んだり。
暮らし方に合わせて細部まで考えられることが、造作キッチンの魅力です。
もちろん一点物だからこそコストとのバランスも重要です。
私たちは「すべてを造作にする」のではなく、本当に価値が生まれる部分を見極めながらご提案しています。
建築と一体になるキッチン
場合によっては、大工工事によってキッチンを建築の一部としてつくることもあります。
壁と同じ素材を使ったり、左官仕上げを取り入れたり。
収納方法まで含めて住まい全体をデザインすることで、家具というより建築そのもののようなキッチンが生まれます。
設備機器を自由に組み合わせながら、建物と一体となった空間をつくることができるのも、この方法ならではの魅力です。
大切なのは「どのキッチン」ではなく、「どう暮らしたいか」
「メーカーキッチンと造作キッチン、どちらが良いですか?」
これは設計の打ち合わせでよくいただくご質問です。
私たちの答えは、いつも同じです。
「ご家族がどのように暮らしたいかによって答えは変わります。」
コストを優先したい方。
デザインを大切にしたい方。
メンテナンス性を重視したい方。
料理を楽しみたい方。
家族や友人と囲めるキッチンを求める方。
それぞれに最適な答えがあります。
建築家の役割は、メーカーを選ぶことでも、造作を勧めることでもありません。
ご家族の暮らし方を丁寧に伺い、その住まいに最もふさわしいキッチンを一緒に考えることだと、私たちは考えています。
English
A kitchen should be designed around the way you live, not simply selected from a catalog.
Whether it is a manufacturer’s kitchen, a custom-made kitchen, or one integrated into the architecture itself, the best choice depends on your lifestyle, values, and the way you want to spend time at home.
Last Updated:2026.07.07
この考え方から生まれた住まい
●メーカーキッチンの実例


〔六角形の家のキッチン〕
シンプルなデザインで使い勝手が良いシステムキッチンをカラマツ3層合板で囲みを作り、リビング側からは家具のように木の素材感だけを見せる構成としました。(キッチン:クリナップ札幌支店)


〔Slashのキッチン〕
システムキッチンを大きなカウンターで囲み、ダイニングと連続感を出し木の質感で既製品らしさを隠し、インテリアとして統一感を持たせています。(キッチン:クリナップ札幌支店)
●「造作家具」キッチンの実例


〔四分円階段が繋ぐ家のキッチン〕
インテリアの素材感やプランを考えるのと同時進行で素材やデザイン、使い勝手からのキッチンプランを、設計と造作家具業者様とクライアント様、3者で一から検討をして制作して頂きました。
システムキッチンでは難しい、使い勝手に沿ったオリジナルなキッチンとなりました。
(キッチン:匠龍木工社)


〔集光の家のキッチン〕
背面のキッチン収納と共に、リビングの家具でありアクセントウォールとして、建築と一体してインテリアに調和するキッチンを銘木突板の素材、形状や使い勝手含めオリジナルのキッチンを検討しました。
ダイニングテーブルも素材感を合わせ一体で造作しています。
背面食器棚の一つはパントリールームに繋がる扉。隠し扉のようにデザインを合わせています。
(キッチン:匠龍木工社)


〔双奏の家のキッチン〕
キッチンは住まいの中心となる場所として、建築と一体で計画した造作キッチンです。節のあるナラ材を用いた温かみのある素材感を基調に、ダイニングやリビングとの連続性を大切にしながらデザインしました。IHコンロとガスコンロを併用し、海外製食洗機を組み込むなど、デザイン性だけでなく調理のしやすさや使い勝手にも配慮しています。ご家族の暮らし方に合わせて、素材・設備・寸法まで丁寧に検討した、この住まいだけのオリジナルキッチンです。
(キッチン:匠龍木工社)
●「大工工事」キッチンの実例


〔里山の家のキッチン〕
建築の壁と同じ木毛セメント板で壁を立ち上げ、天板を左官(モールテックス)仕上げとしました。
大工工事のため、収納は割り切ってオープン収納、ワゴン収納や日々使うものはオープンに使用します。
レンジフード、コンロ、水栓、食洗器など、別々のメーカーですが、クライアント様こだわりの設備を取り寄せ自由に組み合わせています。
アクセント壁のタイルをインテリア的に自由に展開させたりと、建築と一体となったキッチンとなりました。(工事施工:コーユー創建)