住まいを考える|06|間取りは暮らし方から考える
間取りから考えるのではなく、暮らしから考えます
家づくりを考え始めると、多くの方が最初に考えるのは「間取り」ではないでしょうか。
3LDKがいいのか、4LDKがいいのか。
広いリビングが欲しい。子ども部屋は二つ欲しい。書斎も欲しい。
住宅会社のホームページや住宅雑誌にも、「人気の間取り」「おすすめの間取り」という言葉がたくさん並んでいます。
ですが、私たちは、間取りから住まいづくりを始めることはほとんどありません。
私たちが最初に考えるのは、
「このご家族にとって、どんな暮らしが一番心地よいのだろう。」
ということです。
間取りは、目的ではなく結果です
現在では「3LDK」「4LDK」という言葉が当たり前になっています。
これは戦後、多くの住宅を効率よく供給するために広まり、住まいを分かりやすく表す方法として定着しました。
もちろん、この考え方が悪いわけではありません。
ただ、その考え方が長く続いたことで、本来は設計の結果であるはずの「間取り」が、いつの間にか家づくりの目的になってしまうことがあります。
「4LDKが欲しい。」
「広いリビングが欲しい。」
でも、本当に大切なのは、その先です。
なぜ、それが必要なのでしょうか。
私たちは、その理由を一緒に考えるところから設計を始めます。
「広いリビング」が、本当に答えでしょうか
例えば、
「広いリビングが欲しい。」
というご要望をいただいたとします。
では、なぜ広いリビングが必要なのでしょう。
家族みんなで過ごしたいから。
子どもが遊べる場所が欲しいから。
休日はゆっくりくつろぎたいから。
そうしてお話を伺っていくと、本当に求めているものが少しずつ見えてきます。
実際には、家族全員がいつも同じソファに並んでテレビを見ているわけではありません。
料理をする人。
本を読む人。
仕事をする人。
遊ぶ人。
それぞれが違う時間を過ごしています。
それでも、お互いの気配は感じていたい。
そんな時間の方が、暮らしの中ではずっと多いのではないでしょうか。
人は、「部屋」で暮らしているわけではありません
私たちは、人は部屋で暮らしているとは考えていません。
その時、その瞬間に心地よい場所を選びながら暮らしています。
一人になりたい時もある。
家族と同じ空間にいたい時もある。
姿は見えなくても、声だけ聞こえる距離が心地よい時もあります。
家族であっても、その距離は一日中同じではありません。
近づいたり、少し離れたり。
その間には、無数のグラデーションがあります。
私たちは、その距離まで設計したいと考えています。
名前のない場所が、暮らしを豊かにします
住まいには、
リビング。
ダイニング。
寝室。
子ども部屋。
そんな名前の付いた部屋があります。
けれど、本当に心地よい場所は、それだけではありません。
窓際。
階段の途中。
少し腰掛けられる場所。
廊下が少し広くなった場所。
どこの部屋とも言えない、小さな余白。
そんな場所で本を読んだり、外を眺めたり、お子さんが遊び始めたりすることがあります。
自然の中でも、人は決められた場所だけで過ごしているわけではありません。
木陰に座ったり、岩に腰掛けたり、風の通る場所へ移動したり、その時一番心地よい場所を自然に選びます。
住まいも同じです。
名前の付いた部屋だけではなく、名前のない居場所が、暮らしを豊かにしてくれるのです。
実例|「Unison」で考えた、家族の距離感
実際に設計した「Unison」では、家族が集まるリビングだけではなく、その少し先にセカンドリビングを設けました。
リビングとは吹き抜けを介してつながり、お互いの気配は感じられますが、視線はほどよく外れています。
また、その途中には中二階のワークスペースがあります。
仕事や趣味に集中しながらも、少し振り返ればリビングやキッチンの様子が見える。
家族とのつながりを感じながら、それぞれの時間を大切にできる空間です。
セカンドリビングでは、本を読んだり、洗濯物を畳んだり、アイロンを掛けたり、お子さんがおもちゃを広げたり、少し昼寝をしたり。
どれも「リビング」でなければできないことではありません。
また、「個室」に閉じこもるほどでもありません。
リビングと個室、その中間にある居場所。
家族の気配を感じながら、自分らしい時間を過ごせる場所です。
私たちは、「リビング」と「個室」という二つの選択肢だけではなく、その間にある様々な居場所を設計したいと考えています。

暮らしを設計すると、間取りが生まれます
私たちは、最初から「リビング」や「子ども部屋」を設計しているわけではありません。
そこでどんな時間が流れるのか。
家族はどんな距離で過ごすと心地よいのか。
どんな人生を送りたいのか。
そうした一つひとつを丁寧に考え、その答えを建築という形にしていきます。
部屋の名前を先に決めるのではなく、その場所に流れる時間を考える。
その結果として、「リビング」と呼ばれる場所が生まれ、「子ども部屋」と呼ばれる場所が生まれます。
つまり、私たちが設計しているのは、間取りではありません。
暮らしです。
そのご家族が、どんな時間を過ごし、どんな距離で寄り添い、どんな人生を歩んでいくのか。
その暮らしを形にした結果として、「間取り」が自然と生まれる。
それが、富谷洋介建築設計の考える住まいづくりです。

この考え方から生まれた住まい
Unison
リビング・中二階のワークスペース・セカンドリビングを吹き抜けで緩やかにつなぎ、家族がそれぞれ心地よい距離で過ごせる住まいです。大きな一つのリビングではなく、多様な居場所を設けることで、「一緒にいる」と「一人で過ごす」の間にある豊かな時間を生み出しています。
Four Decks
用途を固定しすぎず、家族構成や暮らし方の変化に合わせて柔軟に使える空間を計画しました。部屋数や間取りを優先するのではなく、その時々の暮らしに合わせて役割を変えられる、将来まで見据えた住まいです。
森窓の家
ヌックや土間、薪ストーブの周りなど、用途を決めすぎない居場所を住まいの中に点在させました。景色を眺める、読書をする、趣味を楽しむなど、その日の気分や過ごし方に合わせて自然と居場所を選べる、暮らしの豊かさを大切にした住まいです。
Summary (English)
A floor plan is not the starting point of residential design—it is the result. Rather than arranging rooms first, we begin by understanding how each family wants to live. By carefully designing relationships, daily routines, and comfortable distances between family members, the floor plan naturally emerges as the best answer for that unique lifestyle.
Last Updated:2026.07.27