住まいを考える|44|北海道の家と、雪のことを考える。
北海道で家を建てるとき、雪のことは避けて通れません。
屋根からの落雪、雪庇、吹きだまり、除雪、雪置き場、凍結。駐車場から玄関までの動線や、外部設備をどこに置くかということも、雪と無関係ではありません。
札幌では、一晩でまとまった雪が降ることがあります。
朝起きて、まず雪かきをする。車を出せるようにして、玄関までの道をつくり、道路際に除雪車が残していった雪を寄せる。
雪の量によっては、それだけで汗だくになり、かなりの時間と体力を使います。
雪の降らない地域ではなかなか想像しにくいかもしれませんが、積雪地ではそれが日々の暮らしの一部です。
だから北海道の家では、雪が降ってからどう対処するかだけではなく、
雪のある暮らしを、設計の段階から考えておくこと。
それがとても大切だと思っています。

まず、除雪しなければならない場所を減らす
雪対策というと、最初に「雪をどこへ捨てるか」を考えがちです。
もちろん、それも大切です。
ただ、その前に私たちが考えるのは、
そもそも、どのくらいの範囲を除雪しなければならないのか。
ということです。
玄関から道路まで。駐車スペース。物置までの通路。場合によっては灯油タンクやガスボンベなど、冬でもアクセスする必要がある場所。
こうした場所が敷地の中にバラバラにあれば、それだけ除雪する範囲も増えていきます。
そこで、できるだけ冬の生活動線を短くすることを考えます。
玄関を道路との関係から配置する。玄関の庇を大きくする。玄関ポーチとカーポートの屋根をつなげ、車から玄関まで雪に当たりにくくする。建物の一部を引き込んで、屋根の下に玄関ポーチをつくる。
ガレージであれば、車から家の中まで外へ出ずに移動することもできます。
どれが正解ということではありません。敷地条件やご家族の暮らし方、予算とのバランスを見ながら、
毎日の雪かきを少しでも減らせる配置を考える。
北海道の住宅では、これも大切なプランニングの一つです。
雪を「どこへ置くか」まで考えておく
どれだけ工夫しても、すべての除雪をなくすことはなかなかできません。
そして雪かきで難しいのは、雪を避ければ終わりではないことです。
避けた雪は、そこに残ります。
札幌では道路の除雪が入っても、日常的な除雪では道路脇へ雪が寄せられ、家の前に雪が残ることもあります。駐車場や玄関前の雪も、どこかへ移動させなければなりません。
敷地内に雪を置く場所がなければ、ママさんダンプに雪を載せて、何度も遠くの公園まで運ぶことになります。
これはかなりの重労働です。
だから設計するときには、雪を置く場所も敷地計画の一部として考えます。
例えば庭です。
夏は家族が過ごしたり、植栽を楽しんだりする場所でも、冬には雪置き場として使うことができます。
あるいは、夏には来客時の予備駐車場として使える砂利敷きの場所をつくり、冬はそこへ雪を積む。
一つの場所を一年中同じ用途で考えるのではなく、夏と冬で使い方を変える。
北海道の敷地計画では、こうした季節による使い分けも大切です。
ロードヒーティングは、必要な場所を考える
除雪の負担をさらに減らしたい場合には、ロードヒーティングという選択肢もあります。
適切に使えば、玄関前や駐車場などの除雪負担を大きく減らすことができます。
一方で、設置費用とランニングコストが必要です。
そのため、単純に「ロードヒーティングを入れれば安心」と考えるのではなく、どこまで必要なのかを考えます。
玄関前だけなのか。駐車場全体なのか。どのくらいの頻度で使うのか。面積や用途、利用できるエネルギーによって、適した方式も変わります。
すべてを融雪するのではなく、本当に必要なところだけを融雪するという考え方もあります。
除雪の手間、初期費用、将来のランニングコスト。
それぞれを比較しながら、その家に合った方法を考えます。
冬の外階段は、慎重に考える
北海道では、外部の階段も冬の暮らしに大きく影響します。
雪が積もり、踏み固められ、気温が下がれば凍る。平らな場所以上に、階段は転倒につながりやすい場所になります。
そのため、そもそも長い外階段をつくらなくて済む配置を考えることもあります。
必要な場合には庇や融雪を検討したり、コンクリートを滑りにくい粗面の仕上げとしたり、冬に滑り止めを設置しやすいようにしたりする。
雪のない季節の図面だけを見ていると、こうしたことは意外と見落とされます。
冬、その場所をどう歩くのか。
そこまで想像しながら、外部空間を考えます。
屋根の雪を、落とすのか、載せておくのか
北海道の昔の住宅には、三角屋根が多く見られました。
屋根に積もった雪を、勾配に沿って落とす考え方です。今でも地域によっては、そうした住宅の街並みを見ることができます。
ただ、屋根から大量の雪を落とすということは、その雪を受ける場所が必要です。
人のいる場所へ落ちれば危険ですし、隣地や道路との関係も考えなければなりません。
そのため現在では、積雪荷重を見込んで構造設計を行い、屋根に雪を載せたままにする計画が一般的になっています。
もちろん、敷地や建物の条件によって、雪を落とす屋根が適している場合もあります。
大切なのは、屋根の形だけを先に決めるのではなく、
その雪を最終的にどうするのかまで考えて、屋根を決めることです。
雪を載せるなら、「載せたままで大丈夫」な建物にする
屋根に雪を載せておくなら、それを前提として建物をつくらなければなりません。
まず、積雪による荷重を見込んで構造を考える。
そしてもう一つ重要なのが、屋根面の温度です。
室内の暖かさが小屋裏へ逃げて屋根面を暖めると、積もった雪が部分的に融けることがあります。その水が再び冷やされれば凍結し、つららやすが漏りなど、雪や氷による不具合につながることがあります。
そのため、断熱・気密をしっかりと確保し、小屋裏を適切に換気して、屋根面に暖気がいかないようにする。
屋根の形、構造、断熱、気密、換気は、それぞれ別の話ではありません。
北海道では、それらを一体として考えることが、冬の屋根を守ることにつながります。
見えない屋根だからこそ、万一まで考える
私たちの設計では、建物の条件によってシート防水の屋根の採用が増えています。
屋根には、融けた雪や雨水を流すための排水口があります。
当然、きちんと排水できるように計画しますが、落ち葉などによって排水口が詰まる可能性までゼロにすることはできません。
もし融雪時に排水が滞れば、一時的に屋根面へ水が溜まることも考えられます。
そうした万一の状態まで想定し、連続した防水層をつくりやすいシート防水を選択する場合があります。
普段は見えない場所だからこそ、
問題を起こりにくくすることと、想定外の状態になったときにも建物を守ること。
その両方を考えておきたいと思っています。
雪庇や落雪を、人の動線から離す
冬になると、屋根の端から雪がせり出して「雪庇」ができることがあります。
それが気温の上昇などによって突然落ちれば、かなりの重量、また硬さになります。
例えば玄関ドアを開けた真上に大きな屋根があり、そこから雪庇や雪の塊が落ちてくる。
毎日人が通る場所であれば、避けなくてはいけない状況です。
そのため、玄関を外壁面から少し引っ込ませたり、小さな屋根や庇を設けたりして、万一上から雪が落ちても直接人のいる場所へ届きにくくします。
雪庇や吹きだまりは、風向きや周辺環境などによって変化するため、すべてを正確に予測できるわけではありませんが、計画段階でなるべく考慮したプランを考えます。
そして万が一、
雪が落ちたときにも、安全に配慮した形にしておく。
長く暮らす住宅では、そうした小さな先回りも大切です。

外にある設備にも、雪は降る
家の外には、換気の給排気口、エアコンの室外機、給湯設備、灯油タンク、物置など、さまざまなものがあります。
夏だけを見れば、空いているところへ配置できそうに見えます。
でも冬には、そこへ雪が積もります。
屋根から雪が落ちてこないか。
雪に埋もれないか。
暴風雪のときに雪が吹き込みにくいか。
点検や交換が必要になったとき、人がそこまで行けるか。
外部フードなども、積雪や暴風雪を考慮した仕様を検討します。
設備そのものを選ぶことと、それをどこに置くかはセットです。
外部設備についても、雪が積もった状態を想像しながら配置していきます。
水道凍結は、住む人の注意だけに頼らない
札幌でも強く冷え込む日には、水道凍結への注意が呼びかけられます。
水が凍ると膨張するため、場合によっては配管を破損させ、水漏れによって建物へ大きな被害を与えることがあります。
もちろん、長期間家を空ける場合など、住む人側で水抜きなどの対応が必要になることもあります。
ただ、通常の暮らしの中で凍結しにくい建物にしておくことは、まず設計側で考えるべきことです。
私たちが木造住宅で採用することの多い基礎断熱では、床下も断熱された領域の中に入ります。そのため、床下の配管を外気に直接さらしにくくすることができます。
一方、一階が非暖房のガレージで、その上に住宅がある場合など、どうしても冷えやすい場所を配管が通らなければならないこともあります。
そうした場合には、配管をしっかり保温し、必要に応じて凍結防止ヒーターなどを組み合わせる。
「寒い日は気をつけてください」だけではなく、まず建物側で凍結しにくくしておく。
小さなストレスを設計の配慮で取り除く、これも寒冷地の住宅設計では大切なことだと考えています。
雪があるから、冬の家は明るい
ここまで、雪によって困ることを多く書いてきました。
でも、雪はデメリットばかりではありません。
北海道の冬には、冬にしかない光があります。
地面が白い雪に覆われると、太陽から届いた光が雪面に反射します。
夏には主に空や太陽の方向から感じていた光が、冬には雪面からも室内へ返ってくる。
そのため、雪に覆われた冬の景色は、意外なほど明るく感じることがあります。
また、夏には葉を茂らせていた広葉樹も、冬には葉を落とします。
太陽高度も低くなり、夏とは違う角度から暖かな日差しが室内の奥まで差し込むことがあります。
冬の日差しの中にいると、窓辺がぽかぽかと暖かい。
そんな経験をされた方も多いと思います。
これは感覚的な心地よさだけではありません。冬の日射を室内へ取り込むことは、暖房負荷を考えるうえでも意味があります。
だから窓を考えるときには、
夏に何が見えるかだけではなく、雪が積もった冬に、その窓がどうなるのか。
ということも考えます。
雪に覆われた庭。
白い森。
雪面から反射する柔らかな光。
雪は、取り除く対象であると同時に、北海道の住まいをつくる美しい風景の一部でもあります。
積雪地で、太陽光発電をどう考えるか
太陽光発電についても、北海道では積雪との関係を考える必要があります。
屋根上の太陽光パネルが雪に覆われれば、その期間は発電量が大きく低下します。
そこで一つの方法として考えられるのが、壁面を利用した太陽光発電です。
私たちが設計した「森窓の家」では、壁面に太陽光パネルを設置しています。
屋根面とは異なり雪に覆われにくく、冬の発電も考えやすいという特徴があります。
もちろん、設置する方角や角度などによって条件は変わりますので、どんな住宅にも壁面設置が適しているということではありません。
ただ、
雪が降るから難しい、と終わらせるのではなく、積雪地なら積雪地なりの方法を考える。
これも北海道で家をつくるときの一つの考え方だと思います。

雪は、計画の最初から考える
雪は、家が完成してから除雪で解決するだけの問題ではありません。
建物をどこに置くか。
屋根をどう架けるか。
雪をどこへ置くか。
車をどこに停め、玄関までどう歩くか。
外部設備をどこに置くか。
屋根や配管をどうつくるか。
そして、冬の光や雪景色を、家の中へどう取り込むか。
これらを設計の最初から考えておくことで、冬の暮らしの負担は変わります。
北海道の家では、雪をどう処理するかだけでなく、
雪のある暮らしをどう計画するか。
それが大切だと思っています。
北海道で家をつくるということは、雪のない季節だけの家を考えることではありません。
雪のある数か月も含めて、一年を通して心地よく暮らせる住まいを考える。
そして、雪をただ克服するのではなく、冬にしかない光や風景も暮らしの中へ取り込んでいく。
雪のある土地だからこそできる住まいを考えることも、北海道で設計する面白さの一つです。
関連する住まい
森窓の家
積雪地におけるエネルギー利用の一つの試みとして、壁面太陽光を採用した住まいです。
住まいを考える
「住まいを考える」は、住まいづくりにまつわる考え方や設計の工夫を、一つひとつテーマごとにまとめたシリーズです。
▶ 「住まいを考える」一覧はこちら
English Summary
Thinking About Snow and Homes in Hokkaido
Designing a home in Hokkaido means thinking about snow from the very beginning. Snow storage, daily shoveling routes, roof design, entrances, outdoor equipment, frozen pipes and winter sunlight are all part of architectural planning.
By reducing the areas that require shoveling, providing appropriate places for snow storage, protecting entrances from falling snow, designing roofs and building envelopes for winter conditions, and carefully locating outdoor equipment, the burden of winter living can be reduced.
At the same time, snow is not only something to overcome. Reflected light from snow-covered ground, low winter sunlight and the beauty of the snowy landscape are unique qualities of life in Hokkaido.
We believe that designing a home for Hokkaido means considering the entire year—including the snowy months—and finding ways not only to protect daily life from snow, but also to enjoy the light and landscape that winter brings.
Last Updated: 2026.08.27