住まいを考える|14|北海道で暮らすということ。
私は倶知安町で生まれ、幼い頃に札幌へ移り住みました。
それ以来、人生のほとんどを北海道で暮らし、この土地で建築を考え続けています。
北海道は、自然の厳しさと美しさが隣り合わせにある土地です。
春には雪が解け、一斉に木々が芽吹きます。
短い夏には、草花が力強く咲き誇り、人も自然もその季節を思い切り楽しもうとします。
秋には山々が色づき、木々は静かに葉を落とし、長い冬への準備を始めます。
そして冬。
一夜にして景色は白く染まり、朝はカーテンを開ける前から、雪に反射したやわらかな光が部屋の中へ届きます。
窓の外には、音まで吸い込まれたような静かな雪景色。
北海道では、この四季の移ろいが日常です。
私たちは、この美しい自然の中で暮らす住まいを設計しています。
北海道の住まいは、自然を理解することから始まります
その一方で、北海道は日本でも特に厳しい自然環境を持つ地域でもあります。
氷点下まで下がる気温。
雪や氷。
激しい温度変化、凍結と融解の繰り返し。
強い風や雨。
住宅は一年を通して、その環境に耐え続けなければなりません。
だから外壁や屋根には、気候変化に強い素材を選びます。
窓まわりや水切り、屋根形状などの細かな納まりにも、この土地だからこそ積み重ねられてきた考え方があります。
美しいだけでは、長く安心して暮らすことはできません。
自然に耐えながら、美しさを保ち続けること。
それもまた、北海道の建築には欠かせない条件です。

性能は、豊かな暮らしのスタートラインです
寒冷地北海道では、高断熱・高気密という言葉を特に大切にします。
でも私たちは、それを北海道の住まいの特徴とは考えていません。
それは、この土地で暮らすための当然備えるべき前提条件です。
暖かいこと。
室内の温度差が少ないこと。
暖房の熱を逃がさないこと。
住宅は、人を雨や雪から守るだけではありません。
厳しい寒さから家族を守る、人にとってのシェルターでもあります。
その役割を果たして初めて、窓から見える景色や、光、素材、空間の心地よさを考えることができます。
性能はゴールではありません。
豊かな暮らしを支える土台です。
冬の暮らしまで設計します
北海道では、冬になると家の中で過ごす時間が長くなります。
また、雪が降るたびに除雪をしながら暮らしていかなければなりません。
だから私たちは、間取りだけではなく、冬の生活そのものを設計します。
屋根から雪はどこへ落ちるのか。
人が通る通路の上に雪庇はできないか。
玄関から駐車場まで歩きやすいか。
除雪の負担を少しでも減らせる建物配置になっているか。
除雪道具はどこへ収納するのか。
図面には表れないこうした積み重ねが、北海道の暮らしやすさを大きく左右します。

北海道で積み重ねてきた知見
私たちは、この土地で生まれ、この土地で暮らし、この土地で設計を続けてきました。
雪が降れば除雪をし、
春の雪解けを待ち、
短い夏を楽しみ、
また冬を迎える。
そんな暮らしを繰り返してきたからこそ分かる感覚があります。
冬の日射をどう取り込むのか。
夏の日差しをどう和らげるのか。
雪はどこへ積もるのか。
凍結融解から建物をどう守るのか。
こうした知識は、本だけで身につくものではありません。
地域で暮らし、その土地で設計を積み重ねる中で育まれてきた知見です。
私たちは、その経験を一棟一棟の住まいに生かしています。

この考え方から生まれた住まい
森窓の家
玄関から連続する広い土間は、雪の付いたブーツのまま薪ストーブの近くまで歩き、そのまま暖をとることができる空間です。
窓の向こうには、夏は深い森、冬には一面の雪景色が広がります。
住まわれてから、「夏も美しいですが、冬の景色も劣らず好きです。」というお話をいただきました。
また、積雪寒冷地ならではの工夫として、屋根ではなく外壁面に太陽光パネルを設置し、冬季も発電しやすい計画としています。
里山の家
北海道の原風景ともいえる切妻屋根を、現代の暮らしに合わせて再解釈しました。
広い土間は、雪の付いた靴のまま買い物袋やスキー用品、キャンプ用品を運び込める、北海道らしい生活動線になっています。
薪ストーブの火を囲み、その向こうに広がる雪景色やスキー場を眺める時間も、この土地ならではの豊かさです。
北窓の家
高台から街並みを望む大きな北窓は、北海道ならではの光を取り込む窓です。
雪が反射したやわらかな光が室内を満たし、窓辺では薪ストーブの炎が静かに揺れます。
外壁にはモスグリーンのガルバリウム鋼板と木板を組み合わせ、雪景色の中に立つ針葉樹のように、北海道の風景へ自然に溶け込む佇まいを目指しました。
北海道だからこそ、生まれる豊かさがあります
北海道は、決して楽な土地ではありません。
雪は降り、寒さは厳しく、冬には除雪も欠かせません。
でも、その厳しさがあるからこそ、春の芽吹きは待ち遠しく、短い夏は思い切り楽しみたくなります。
秋には木々が色づき、冬には一夜にして景色が白く染まる。
雪が降った朝は、カーテンを開ける前から部屋の中がやわらかな光に包まれ、窓の外には静かな雪景色が広がります。
そんな四季の移ろいこそ、北海道で暮らす魅力なのだと思います。
住まいは、雨や雪をしのぐためだけの器ではありません。
季節を感じ、
景色を眺め、
家族と火を囲み、
何気ない日常を少し豊かにしてくれる場所です。
厳しい自然があるからこそ、美しい四季があります。
その季節が巡ってくることを、毎年少し楽しみに思える。
そんな暮らしが、この先もずっと続いていく。
私たちは、その時間を受け止められる住まいを、この北海道で、一つひとつ丁寧につくっていきたいと思っています。
住まいを考える
「住まいを考える」は、住まいづくりにまつわる考え方や設計の工夫を、一つひとつテーマごとにまとめたシリーズです。
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English Summary
Living in Hokkaido means embracing both the beauty and the challenges of its unique climate. High-performance building design is only the foundation. The true goal is to create homes that celebrate Hokkaido’s seasons, landscapes, light, and way of life. We believe architecture should help people enjoy the richness of living with nature throughout the year.
Last Updated:2026.08.03