住まいを考える|51|家と庭を、別々に考えない。北海道の四季と外部空間。
家を設計するとき、庭はいつ考えるのでしょうか。
建物の間取りや形が決まり、敷地に残った場所をあとから庭にする。そんな順番を想像する方もいるかもしれません。
私たちは、敷地に建物のボリュームを配置する、その最初の段階から庭についても考えています。
もちろん、庭をどのくらい楽しみたいかは人によって違います。
植物を育てたい方もいれば、できるだけメンテナンスを少なくしたい方もいます。家庭菜園をしたい、子どもを遊ばせたい、外で食事をしたいという方もいます。
庭を一つの大きな場所としてつくることもあれば、目的に合わせていくつかの外部空間に分けることもあります。
ただ、どんな庭であっても、建物とは切り離して考えません。
なぜなら庭は、外から眺めるためだけのものではなく、家の中でどう過ごすかにも関わる場所だからです。

建物を置いた「残り」が、庭ではありません。
リビングで過ごしているとき、窓の向こうに何が見えるのか。
ダイニングから緑が見えるのか。庭へそのまま出られるのか。そこで食事をしたり、子どもが遊んだりできるのか。
庭で育てた野菜を収穫することもあれば、季節ごとに変わる花や木を室内から眺めることもあります。
そう考えていくと、リビングをどこに置くのかを考えることと、庭をどこにつくるのかを考えることは、別々ではありません。
窓をどこに開けるのかを考えることと、その先に何を見せるのかを考えることも同じです。
特に街中の住宅では、周囲に豊かな緑があるとは限りません。
そんな場所でも、自分たちの敷地の中に緑のある外部空間をつくり、室内とつなげることで、暮らしの中に自然を取り込むことができます。
庭は、建物を置いたあとに余った土地ではありません。
室内と一緒に考える、もう一つの生活空間だと思っています。
小さな庭でも、室内の広さは変わります。
庭の価値は、必ずしも広さだけで決まるものではありません。
大きな芝生の庭をつくれる敷地ばかりではありませんし、都市部では限られた外部空間しか取れないこともあります。
それでも、その小さな外部空間をどこにつくるかによって、室内の感じ方は変わります。
たとえばリビングの正面に、自分たちだけの小さな庭がある。
そこまで他者が入ってこないプライベートな場所としてつくることができれば、室内からの視線はガラスを越えて、その先まで伸びていきます。
床面積そのものは変わっていなくても、窓の大きさや透明感、室内から庭までの距離、周囲からの視線を整えることで、外部空間まで室内の広がりの一部として感じることができます。
同じ10㎡の庭でも、建物の横にただ残っている10㎡と、室内からの視線や動きまで考えて配置された10㎡では、その家にとっての価値はずいぶん違います。
庭があるから家が豊かになるのではなく、家と庭がどうつながっているかによって、庭の価値は変わる。
そんなふうに考えています。
窓の先に、何を見せるのか。
敷地を読むときには、周囲の建物や道路、光、景色、視線など、敷地の外側にある環境を見ています。
庭はそれとは少し違って、自分たちである程度つくることのできる外部環境です。
リビングの窓から隣家の外壁が見えるのであれば、その間に植栽を置く。
夏の日差しが強く入る場所なら、窓の外に落葉樹を植え、夏には葉で日差しを和らげ、冬には葉が落ちて光を取り込む。
庭の向こうに森があるなら、自分たちの庭の植栽と、その先にある森がつながって見えるようにすることもできます。
植栽一本の位置まで設計段階で考えることもありますし、すべてを最初から完成させず、住みながら少しずつ庭を育ててもらうこともあります。
窓を考えるとき、その向こう側まで考える。
庭は外構というより、住まいの空間をつくる一部なのだと思います。
中庭・コートハウスという方法もあります。
都市部では、中庭をつくるという方法もあります。
道路や隣家から十分な距離を取ることが難しい敷地でも、建物によって守られた外部空間をつくれば、周囲からの視線を抑えながら光や緑を室内へ取り込むことができます。
中庭は、大きくなくても構いません。
小さな外部空間でも、そこに一本の木があることで、いくつもの場所から同じ緑を眺めることができます。
家の中心に小さな「外」をつくり、そのまわりに暮らしを配置する。
中庭やコートハウスは、都市の中でも外とのつながりを諦めないための方法の一つです。

北海道では、庭も季節によって役割が変わります。
北海道の庭を考えるとき、忘れることができないのが雪です。
春から秋まで気持ちよく使っていた庭も、冬になると雪を置く場所になります。
植栽を敷地いっぱいに配置してしまえば、冬になってから雪を置く場所がなくなってしまうこともあります。
そのため庭を考えるときには、植栽だけではなく、雪を置いても問題のない場所をどこに残すのか、道路や駐車スペースからどう除雪するのかということも一緒に考えます。
物置をどこに置くのか。将来カーポートをつくる可能性があるのか。庭道具や自転車をどこへしまうのか。
庭には、見た目には現れにくい役割もたくさんあります。
一方で、北海道の春から秋は、外で過ごすことがとても気持ちのよい季節です。
庭でバーベキューをしたり、子どもが遊んだりするのを家から眺める、家庭菜園を楽しんだりする。秋には葉の色が変わり、冬になれば雪を受け止める場所になる。
同じ庭が、一年の中で違う場所になる。
それも北海道で庭を持つ面白さだと思います。
雪と住宅の関係については、こちらでも詳しく書いています。
→ 住まいを考える|44|北海道の家と、雪のことを考える。

庭は、家と同時に完成しなくてもいい。
住宅の予算を考えていくと、どうしても建物そのものに費用を優先したい場合があります。
そんなとき、庭や外構は住み始めてから少しずつつくっていくという考え方でもいいと思います。
実際に暮らしてみることで、「ここに木があるといい」「ここで食事をしたい」「この方向の視線を少し隠したい」と分かってくることもあります。
植物そのものも、家と同じ日に完成するものではありません。
小さかった木が育ち、枝を伸ばし、少しずつ庭らしくなっていく。それも住まいの時間の一部です。
ただ、あとから庭をつくるとしても、建物を設計する段階で、将来そこをどんな外部空間にできるのかは考えておいた方がいい。
建物の配置や窓の位置、地盤の高さ、動線などは、あとから簡単には変えられないからです。
全部を完成させておく必要はない。
庭が育っていく余地まで含めて、最初に家を考えておく。
そんなつくり方もあります。
家と庭を、別々に考えない。
家の中だけを設計して、住まいが完成するわけではありません。
窓の向こうに何が見えるのか。そこへ出たとき、何をして過ごすのか。夏にはどんな木陰ができ、冬には雪をどこへ置くのか。
そうした外の時間まで含めて考えることで、敷地全体が暮らしの場所になっていきます。
広い庭である必要も、たくさんの植栽がある必要もありません。
大切なのは、庭がどのように室内とつながり、暮らしの中でどんな役割を持つのかだと思います。
家と庭を、別々に考えない。
北海道の四季の中で暮らす住まいだからこそ、建物の内側と外側を一緒に考えていきたいと思っています。
森窓の家
「森窓の家」は、札幌の住宅地にありながら、敷地の東側に広がる自然林とともに暮らすことを考えた住まいです。
土地探しの段階から「森が見える暮らし」を求め、出会った敷地に対して、リビングやダイニング、土間、中二階の書斎、2階ホールといった異なる居場所を森へ向けています。玄関から続く大きな土間は、薪ストーブやアウトドアを楽しむ場所であると同時に、屋外と室内を緩やかにつなぐ場所にもなっています。
ここでは庭だけを切り取って考えるのではなく、庭の先にある森まで含めて、暮らしの外部環境として捉えています。
季節によって変わる緑や雪景色が、室内からの日常の風景になる住まいです。
Works|森窓の家
集光の家
「集光の家」は、都市部でプライバシーを守りながら、光と緑を暮らしの中へ取り込んだコートハウスです。
南側にテラスと中庭を設け、中庭に面する外壁をハの字に開くことで光を受け止めています。玄関からも中庭の植栽がアイストップとなり、キッチンなど複数の場所から中庭とのつながりを感じられる構成です。
都市の中では、周囲に豊かな緑があるとは限りません。
だからこそ、自分たちの敷地の中につくった小さな外部空間を、どの場所からどう見るかまで設計する。中庭の大きさ以上の存在感を、室内に生み出すことができます。
Works|集光の家
木立の東屋
「木立の東屋」は、森に面する庭に、軽食やお茶を楽しむための小さな居場所をつくった計画です。
まず東屋からの視線を基準に、公園の森と南側へ正対する配置を決めました。そのうえで、遊歩道や道路、隣地からの視線を木塀と蛇篭塀で遮り、森を借景として楽しめるプライベートな庭をつくっています。
庭は、室内から眺めるだけのものではありません。
外へ出て、そこに留まり、食事をしたり、緑を眺めたりする。
庭の中に「居場所」をつくることで、建物の外側にも暮らしの時間を広げることができます。
Works|木立の東屋
住まいを考える
住まいづくりについて、土地、光、窓、庭、雪、予算、暮らし方など、日々の設計を通して考えていることをテーマごとにまとめています。
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English
Designing the House and Garden Together: Outdoor Space Through Hokkaido’s Four Seasons
A garden should not simply be the space left over after placing a house on a site.
From the beginning of the design process, we consider the house and its outdoor spaces together: what can be seen from the living room, where people can step outside, where children might play, where plants or vegetables can grow, and how greenery can provide privacy or soften summer sunlight.
Even a small garden or courtyard can become part of the perceived space of a home when views and movement are carefully connected between inside and outside. In urban areas, a courtyard can also create a private outdoor space that brings light and greenery into everyday life.
In Hokkaido, the role of a garden changes with the seasons. A place for outdoor meals, play and gardening during the warmer months may become an important area for snow storage in winter. Planting, snow removal, storage and future changes therefore need to be considered together.
A garden does not need to be completed when the house is completed. It can grow gradually with the people who live there.
What matters is that the possibility of that future garden is considered from the beginning.
We do not design the house first and the garden later. We think of both as parts of one place to live.
Last Updated|2026.09.17