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2026.8.19 住まいを考えるブログ

住まいを考える|34|スキップフロアは暮らしにくい?


スキップフロアは、暮らしにくいのでしょうか





スキップフロアとは、床の高さを少しずつずらしながら、空間を立体的につないでいくつくり方です。
私たちの設計した住まいにも、スキップフロアを取り入れたものがいくつもあります。

では、スキップフロアは暮らしやすいのでしょうか。
段差がある以上、フラットな住まいに比べて不便になることはあります。
年齢を重ねたときの上り下り。
小さな子どもがいるときの安全性。
掃除のしやすさ。
そう考えれば、床は平らな方が合理的です。
だから私たちも、スキップフロアそのものを目的に設計することはありません。
それでも私たちの設計にスキップフロアがたびたび現れるのは、その土地や暮らしについて考えていった結果、床の高さを変えることに意味が生まれる場合があるからです。









土地の傾斜に、床を寄り添わせる





一つは、傾斜のある敷地です。
傾斜地に建物を建てるとき、土地を造成して平らにし、その上に水平な床をつくる方法があります。
もちろん、それが適切な場合もあります。
一方で、土地の高いところに床の高さを合わせれば、低い側では基礎が大きくなったり、道路から玄関まで長い階段を上らなければならなくなったりすることがあります。
そこで、土地を無理に平らにするのではなく、地面の傾斜に寄り添うように床を置いていく。
すると、自然に床の高さがずれていきます。
外で長い階段を上るのではなく、建物の中へ入ってから、身体的な負担を感じにくい緩やかな数段で高さをつないでいく。
基礎を必要以上に大きくせず、敷地の高低差を消してしまうのではなく、住まいの中へ取り込んでいく考え方です。
傾斜地でスキップフロアを用いてきたのは、「段差のある面白い家をつくりたい」からではありません。
その土地に素直に建築を置こうと考えた結果、床に高低差が生まれたのです。





1階と2階の間に、もう一つの居場所をつくる





もう一つは、家の中のつながりから生まれるスキップフロアです。
一般的な2階建て住宅では、1階から階段を上り、2階へ着きます。
一層分の高さは、人の身長よりもずっと大きなものです。
その高さを一度に上がると、1階と2階は空間としても意識としても、思っている以上に離れます。
そこで私たちが用いることがあるのが、階段の踊り場を少し大きくしたような中間階です。
そこを単なる通路ではなく、書斎にする。
子どもの勉強場所にする。
本を読む場所にする。
趣味の場所にする。
すると、1階から少し目線を上げれば、中間階にいる人が見える。
中間階から目線を上げれば、2階の気配を感じる。
1階、中間階、2階へと、人の意識が螺旋状につながっていきます。
階段は、ただ上り下りするためだけのものではありません。
離れた層をつなぐ装置でもあります。
その途中に「居場所」をつくることで、1階と2階を分断せず、家全体を一つの空間として感じられることがあります。









ほんの一段にも、意味があります





床の高さを変える設計は、半階ずつずれるような大きなスキップフロアだけではありません。
例えば、キッチンの床を一段だけ下げることがあります。
立って料理をする人と、椅子に座って食事をする人。
その高さの違いを床で調整することで、キッチンの天板とダイニングテーブルの高さを近づけることができます。
料理をつくる人と食べる人の目線が近くなり、配膳もしやすくなる。
ほんの一段が、人と人との関係を変えることもあります。
また、床の段差をベンチのように使ったり、ホームシアターの客席のように使ったりすることもあります。
段差そのものに価値があるのではありません。
そこに高さの違いがあることで、何が生まれるのか。
私たちが考えているのは、そのことです。









段差には、もちろんデメリットもあります





一方で、段差を不安に感じる方もいらっしゃいます。
特に多いのは、年齢を重ねたときのことです。
私たちがスキップフロアをつくる場合には、できるだけ身体的な負担を感じにくい、蹴上げを抑えた緩やかな階段を考えます。
それでも、段差をどう感じるかは人によって違います。
少しの上り下りがある暮らしを心地よいと感じる方もいれば、将来を考えてできるだけフラットにしたい方もいます。
どちらが正しいということではありません。
そのご家族がこれから長く暮らしていく姿を想像しながら、一緒に考えて決めていくこと。
それも設計の大切な部分です。





子どもにとっての段差





小さな子どもがいるご家庭では、段差の安全性も気になるところだと思います。
これは、私自身もよく分かります。
私も段差のある家で子どもたちと暮らしていますが、歩き始めた頃には、ひやっとしたこともありました。
本当に小さな時期には、必要な場所にベビーゲートなどを設けながら、成長に合わせて使い方を変えていくこともできます。
そして少し大きくなった子どもたちを見ていると、大人とはまったく違う段差の使い方をします。
上ったり、下りたり。
腰掛けたり、飛び越えたり。
段差そのものを遊び場のようにして、身体いっぱい使って家の中を動き回ります。
安全性はもちろん大切です。
ただ、あらゆる危険をなくすために、住まいからすべての変化を取り除けばよいとも思っていません。
30年、40年、50年と続く暮らしの中で、その場所が長くどんな価値を持つのか。
小さな時期に必要な安全対策と、長い時間を過ごす住まいとしての豊かさ。
その両方を見ながら考えることが大切だと思っています。





吹き抜けや冷暖房は大丈夫?





スキップフロアでは、上下階が吹き抜けのようにつながることも多いため、「1階が寒く、2階が暑くならないのか」と心配されることがあります。
これは、スキップフロアだけの問題としてではなく、住宅全体の温熱環境として考える必要があります。
現在、私たちが設計する北海道の住宅では、外皮の断熱性能を高め、室内の温度差ができるだけ小さくなるように計画しています。
そのうえで、暖房・冷房機器の位置、空気の流れ、必要に応じてシーリングファンなども含めて検討する。
上下階がつながっているから寒い、という単純なものではありません。
空間のつながりと温熱環境を、一緒に設計すること。
それによって、スキップフロアや吹き抜けのある住まいでも、北海道の冬を快適に過ごせるように考えています。





ロボット掃除機は、ちょっと困ります





そして、スキップフロアでいかんともしがたいのが、ロボット掃除機です。
これは実際、少し困ります。
私の自宅にも段差がありますが、ロボット掃除機を使うときには、その都度違う床まで持ち上げています。
フラットだったら、このひと手間はなかったな。
そう思いながら、苦笑して運ぶこともあります。
1階と2階なら2台で済むところ、中間階まであれば3台必要になるかもしれません。
こういう小さな不便は、確かにあります。
だからこそ、その不便以上に、その段差が暮らしにもたらすものがあるのか。
そこまで考えたうえで採用したいと思っています。





スキップフロアは、目的ではなく設計の結果です





土地の高さを読む。
景色を見る。
家族の距離を考える。
それぞれの場所で、どんな時間を過ごすのかを考える。
そうして一つひとつの場所にふさわしい高さを探していった結果、床に段差が生まれることがあります。
反対に、大きな空間がフラットに伸びやかにつながることが、その住まいにとって豊かなのであれば、段差をつくる理由はありません。
私たちは、スキップフロアの家をつくろうとしているわけではありません。
スキップフロアは、目的ではなく設計の結果です。
考えているのは、その土地、その家族、その暮らしにとって、どの高さに床があることが一番心地よいのか。
「床の高さ」を設計すること。
その結果として生まれる段差には、その住まいでしか得られない豊かさがあると考えています。














この考え方から生まれた住まい





段床の家
傾斜する土地に寄り添うように床の高さを変え、敷地の高低差そのものを内部空間の豊かさへつなげた住まいです。
森へひらく家
傾斜地と森の環境を読み取りながら床をずらし、それぞれの高さから森との関係をつくった住まいです。
森窓の家
階段の途中に中間階となる居場所をつくり、1階と2階、吹き抜けを立体的につないだ住まいです。










住まいを考える





「住まいを考える」は、住まいづくりにまつわる考え方や設計の工夫を、一つひとつテーマごとにまとめたシリーズです。
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English Summary





Are Split-Level Homes Difficult to Live In?





Split-level floors are not a design goal in themselves. They can emerge naturally from the slope of a site, the relationship between different living areas, or the need to create meaningful connections between floors. While level changes can bring practical disadvantages, they can also create spatial continuity, useful places to gather, and new relationships between people, landscape and architecture. We believe that a split-level floor should be the result of carefully designing the right floor height for each place and each way of living.





Last Updated|2026.08.12


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