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2026.8.14 住まいを考えるブログ

住まいを考える|19|敷地から何を読み取り、設計に生かすのか。


「敷地を読む」とは、感覚だけの話ではありません





建築の設計では、「敷地を読む」という言葉をよく使います。
光を読む。
風を読む。
景色を読む。
周辺環境を読む。
こう書くと、建築家が敷地に立ち、空や風を感じながら、何かアイデアが降りてくるのを待っているように思われるかもしれません。
建築家という仕事そのものにも、アーティストやデザイナーに近い印象があると思います。
もちろん、実際にその場所に立って感じることや、設計者としての感覚も大切です。
ただ、私たちが考える「敷地を読む」は、もう少し現実的で、むしろ理系的な作業です。
法律や地域の規制。
敷地の形状や傾斜。
方位と太陽の動き。
季節による光の入り方。
道路との関係や、車・人のアプローチ。
隣家の配置や高さ、窓の位置。
そこから生まれる影や視線。
プライバシーを保ちやすい方向。
遠くまで視線が抜ける場所。
既存の植栽や、周辺の植生。
山や森、空、街並みとの関係。
その地域の気候や積雪。
さらには、周辺の建物の色や素材、その街が持っている雰囲気まで。
建築に影響し得る条件をできる限り拾い、それぞれを単独ではなく、複合的な情報として整理していく。
私たちは、この一連の作業を「敷地を読む」と考えています。





条件を重ねると、敷地に濃淡が見えてきます





面白いのは、こうした条件を一つひとつ整理していくと、最初は何もなかった敷地の中に、少しずつ違いが見えてくることです。
ここは冬でも光が入りやすい。
こちらは隣家の影が長く落ちる。
この方向は視線が遠くまで抜ける。
ここなら道路から自然に玄関へ入れる。
この場所にある木は残したい。
こちらへ大きく開くと、隣家からの視線が気になる。
この角には除雪のブルドーザーが雪を置いていきそうだ。

そうやって情報を重ねていくと、「どこに何を置いても同じ」に見えていた敷地が、少しずつ場所ごとの性格を持ちはじめます。
だから私たちは、最初に間取りや建物の形を思いついて、それを敷地へ置いているわけではありません。
さまざまな条件を整理し、その場所にとって自然な方向を少しずつ探していきます。
もちろん、最後には設計者としての判断や感性も必要になります。
けれど、その前にはかなり地道な分析があります。
感性だけで形をつくるのではなく、分析した先で感性を使う。
実際の設計は、そのような作業に近いように思います。





1|まず、街の中で敷地を見る









最初から敷地だけを見るわけではありません。
少し視点を引いて、その土地が街のどこにあるのかを見ます。
どのような地域なのか。
方位はどちらか。
太陽はどの位置を動くのか。
周辺にはどんな建物があるのか。
遠くに山や森、空、街並みが見える方向はあるのか。
その地域にはどんな植生があるのか。
街並みにはどんな色や素材が多いのか。
同じ札幌市内でも、場所が変われば環境は違います。
住宅が密集する地域もあれば、自然がすぐそばにある場所もあります。
平坦な土地もあれば、傾斜によって遠くまで景色が抜ける土地もあります。
そして、敷地のすぐ近くだけを見ていては気づかない可能性もあります。
二階へ上がることで初めて見えてくる山や森。
建物の隙間から抜ける視線。
少し離れた場所にある緑。
まずは、その敷地が街や自然の中でどんな場所にあるのか。
大きな関係から整理していきます。





2|次に、隣家との関係まで近づいて見る









次は、視点を敷地の近くまで寄せます。
ここでは、周辺建物との関係をより具体的に見ていきます。
隣の家はどこに建っているのか。
どのくらいの高さなのか。
どこに窓があるのか。
そこからどんな視線が入るのか。
建物の影は、敷地のどこに落ちるのか。
道路から敷地はどう見えるのか。
逆に、視線が抜ける方向はどこなのか。
例えば、南側だからといって、必ずそこに大きな窓をつくることが最適とは限りません。
南側に隣家が迫っていれば、期待した光が入らないこともあります。
大きな窓をつくっても、隣家の窓と正面から向き合ってしまえば、結局カーテンを閉めて暮らすことになるかもしれません。
一方で北側でも、建物がなく空が大きく開けていれば、安定した光や美しい景色を取り込めることがあります。
方位だけでは答えは出ません。
光、影、視線、景色、道路、隣家、植栽。
それぞれの条件を重ねて見ることで、敷地の中に「心地よく使えそうな場所」と「少し工夫が必要な場所」が見えてきます。





3|読み取った情報を、暮らしのゾーンへ変換する









ここまで来て、ようやく建物の中身を考え始めます。
ただし、まだ間取りは描きません。
これまで整理した条件をもとに、敷地の中へ大まかな暮らしのゾーンを置いてみます。
光が入り、景色が抜ける場所には、家族が長く過ごす場所を。
隣家からの視線が気になる場所には、プライバシーを守りやすい空間を。
道路との関係から、玄関や駐車スペースを考える。
残したい木があれば、それと建物との関係を考える。
庭をどこにつくれば、室内と気持ちよくつながるのかも考える。
一つひとつの条件を重ねていくと、何でも自由に配置できるように見えた敷地の中に、少しずつ場所のヒエラルキーが生まれてきます。
「ここにリビングがあると良さそうだ。」
「こちらには大きな窓を向けられそうだ。」
「ここは個室にすると落ち着きそうだ。」
「この方向には庭をつくりたい。」
建築の輪郭が、少しずつ見え始めます。
これはまだプランではありません。
言ってみれば、プランの叩き台をつくるための、そのまた叩き台です。
でも、この段階があるからこそ、その後に描く間取りの一つひとつに理由が生まれます。





間取りを描く前に、設計はすでに始まっています





家づくりというと、最初に間取りを考えるイメージがあるかもしれません。
リビングは何畳。
子ども部屋はいくつ。
キッチンは対面式。
もちろん、それらも大切です。
でも、それだけを先に決めてしまえば、敷地がどこにあっても同じ間取りを置くことができてしまいます。
私たちは、その土地だから生まれる住まいを考えたいと思っています。
法律、地域性、地形、道路、光、影、視線、景色、植生、街並み。
一見すると設計の自由を制限するように見える条件を、一つずつ整理する。
すると逆に、
「この場所なら、こう暮らすと気持ちが良さそうだ」
という可能性が見えてきます。
敷地を読むことは、天啓のようにアイディアを待つということではありません。
その場所に存在する現実を丁寧に集め、整理し、設計の手がかりへ変えていく時間です。





そして、「暮らしを考える」へ





ただし、敷地をどれだけ詳しく分析しても、それだけでは住まいにはなりません。
ここから必要になるのが、そこで暮らす人のことです。
朝はどこで過ごしたいのか。
家族はどこに集まるのか。
庭とどんな関係をつくりたいのか。
一人で過ごせる場所は必要なのか。
料理をしているとき、家族とどうつながっていたいのか。
敷地から読み取った条件に、ご家族の暮らしを重ねていく。
「この場所だからできること」と、「この家族がしたいこと」を重ね合わせる。
そこから、その家の間取りが生まれ始めます。
敷地を読むことは、それ自体が目的ではありません。
その場所で心地よく暮らすための手がかりを、できるだけたくさん見つけること。
そして、その手がかりをご家族の暮らしと結びつけていくこと。
私たちにとって「敷地を読む」とは、そんな設計の最初の時間です。
ここから住まいづくりは、「敷地を読む」から「暮らしを考える」へと進んでいきます。










住まいを考える





家づくりには、正解が一つではないからこそ、多くの考え方に触れることが大切だと考えています。
「住まいを考える」は、土地や間取り、光や素材、富谷洋介建築設計の視点を通して、住まいづくりを少し深く、少し楽しく考えるためのシリーズです。一つの記事が答えではなく、ご自身やご家族らしい住まいを見つけるきっかけになれば嬉しく思います。
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English Summary
How We Read a Site Before Designing a Home
“Reading the site” is not simply an intuitive or artistic process. We analyze the many conditions that can influence architecture—from regulations, orientation, sunlight and topography to neighboring buildings, privacy, views, vegetation, streets and the character of the surrounding town. By gradually moving from the larger context to the immediate surroundings and finally to spatial zoning, these conditions become clues for design. The next step is to connect what the site tells us with how each family wants to live.
Last Updated:2026.08.10


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