住まいを考える|26|光も、設計する。
住まいには、昼と夜があります。
昼は窓から差し込む自然の光。
夜は照明がつくる光。
私たちは、この二つを別々のものとは考えていません。
朝、カーテンを開けたときの心地よさ。
夜、照明を落として家族と過ごす穏やかな時間。
そのどちらも含めて、一日の「光の環境」を設計することが、住まいづくりの大切な仕事だと考えています。
明るければ、心地よいとは限りません
「部屋は明るい方が良い。」
そう思われる方も多いかもしれません。
もちろん、十分な明るさが必要な場所はあります。
キッチンでは食材の色が見えやすいこと。
洗面では顔色やメイクが確認しやすいこと。
書斎や子ども部屋では、本やノートが読みやすいこと。
一方で、リビングやダイニング、寝室はどうでしょうか。
そこは作業をする場所というよりも、家族と食事をしたり、会話を楽しんだり、一日の疲れを癒したりする場所です。
住宅の照明計画では、作業に必要な光と、空間全体の心地よさをつくる光を組み合わせる「タスク・アンビエント照明」という考え方があります。
「必要な場所に、必要な光を」という考え方を大切にしています。

光の色も、暮らしに合わせて選びます
照明には、暖かみのある電球色と、白くすっきりとした昼白色など、さまざまな光の色があります。
リビングやダイニングでは、暖かみのある光。
家族が自然とくつろぎ、一日の終わりに気持ちを落ち着かせる場所だからです。
一方で、洗面では顔色を確認しやすく、キッチンでは食材の色が分かりやすく、書斎では文字が読みやすい光が向いている場合もあります。
どちらが優れているということではありません。
その場所で何をするのか。
どんな時間を過ごすのか。
暮らし方が決まると、光の色も自然と決まってきます。
また、一つの空間の中に異なる光の色が混在すると、落ち着かない印象になることがあります。住まい全体を一つの空間として捉えながら、光の色も丁寧に整えています。

明るさにも、メリハリがあります
照明は、部屋全体を均一に明るくするためだけのものではありません。
本を読む場所。
料理をする場所。
食卓を囲む場所。
そこには十分な明るさが必要です。
一方で、それ以外の場所まで同じ明るさにすると、空間は平坦な印象になります。
壁を照らす。
天井を照らす。
少し暗さを残す。
そんな明暗の対比があることで、空間には奥行きや落ち着きが生まれます。
建築では、低い天井があるから吹抜けがより高く感じられるように、光にも対比があります。
明るさを増やすことだけではなく、必要な場所に必要な光を届けること。
その積み重ねが、心地よい空間につながると考えています。

照明器具も、建築の一部です
照明は、夜だけの存在ではありません。
昼間でも、照明器具は天井にあります。
だから私たちは、光だけではなく、照明器具そのものの配置にもこだわります。
壁や窓の中心を基準に位置を決めること。
ダウンライトの間隔を整えること。
火災感知器や換気口など、他の設備とのラインを揃えること。
空間によってはシンメトリーに、時にはあえてアシンメトリーに。
図面では数ミリ単位で位置を決め、現場でも一つひとつ確認しながら施工を進めます。
照明だけが整っていても、美しい空間にはなりません。
建築、設備、家具、照明。
それぞれが調和して初めて、住まい全体にまとまりが生まれます。
この考え方から生まれた住まい
例えば、自邸である宮の沢の家では、一つの空間の中に複数の照明を組み合わせています。
ソファでは読書ができる明るさ。
ダイニングでは食卓を囲む落ち着いた光。
壁面はスポットライトで照らし、空間に広がりを与えます。
テレビの背面には間接照明を設け、夜でも目にやさしく、穏やかに過ごせるようにしました。
すべての照明を点灯すれば、一番明るくなります。
でも、実際にその状態で過ごすことはほとんどありません。
食事をするとき。
映画を見るとき。
家族と会話を楽しむとき。
その時間に合わせて光を選べることも、豊かな住まいの一つだと思っています。

暮らしを考えると、光が決まります
照明計画というと、照明器具を選ぶことだと思われるかもしれません。
でも、私たちが最初に考えるのは器具ではありません。
この場所で、何をするのか。
誰と過ごすのか。
どんな時間を大切にしたいのか。
そこから考え始めると、光の色も、明るさも、照らし方も、自然と決まってきます。
照明は、住まいが完成した最後に取り付ける設備ではありません。
暮らしを形づくる、大切な設計要素の一つです。
昼は自然光が住まいをつくり、
夜は照明が住まいをつくる。
私たちは、そのどちらも同じように大切に設計しています。
住まいを考える
「住まいを考える」は、住まいづくりにまつわる考え方や設計の工夫を、一つひとつテーマごとにまとめたシリーズです。
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English Summary
Good residential lighting is not simply about brightness. It is about designing light to support the way people live throughout the day. By carefully considering light color, brightness, fixture placement, and atmosphere, we create homes that remain comfortable from morning to night.
Last Updated:2026.08.03